長い言い訳

今いる会社の文化についていけなくなっている。会社というより、社会かな。成長思考、上昇志向といったものだ。今日は昨日よりも良くなって、明日は今日よりも良くなって、そういうことが、この先も永遠に続いていくという考え方に息苦しさを感じるようになったのだ。
自分の求めるのは成長じゃなく安定なのだ。明日も今日と同じように過ごせるという安心が欲しい。だからあえてリスクを犯して何かを変えなければいけない、この仕事に疲れている。若い頃は真逆の考えをしていただけに、変化の大きさに驚いている。

人生をシフトダウンしたいと思っている。これまでの人生、たまたま数学にのめり込んで偏差値の高い大学を良い成績で出たばっかりに、大きな会社に入り、高い年収を受け取り、最初についた上司が偉くなっていったから、出世も早かった。
その会社は辞めたのだが、今の会社に移ってからも、元の会社の規模や資格から、出世を打診されている。期せずしてエリート街道継続させられている。
しかし、それは本当の自分ではない。このままこの生き方を続ければ、自分は前の会社と同じく、周囲からは浮いて、嫌われ、大した仕事も与えられずに、高い給与だけ貰う存在になってしまうだろう。

シフトダウンするにして、問題は家族、とりわけ妻だ。虚像だったとはいえエリートたらんとしていた頃に出会い、エリートであることを認められて結婚した。
以前に一度、自分は将来バスの運転手をしたいと言ったことがあるが、その時、本気で嫌がられた。理由は無く、ただ「嫌だ」と。
妻にとっての自分はエリートで、エリートでない仕事をする男と結婚したつもりはない、ということなのだろう。
思うがままに仕事をやめたら離婚が見えてくる。そして子供への影響は? 計り知れない。本当の自分の代償はとても大きい。
ストレスを抱えて、自分の考えを殺してでも家族は守らなきゃいけない、という考え方は美しい。今の日本の風潮としては僕は何とか今のままやり切らなきゃいけないんだろう。

だんだん妻のことが嫌いになってきていて、自分の行動を制限する足枷のように感じている。仮に僕がエリートを続けていたとして、自分はその妻の役割を100%果たしているのかというのがその不満。
専業主婦の癖に1日10時間以上寝て、好きなだけスマホして。こちらの休みには育児も家事もやらせる。どっかに出かけると疲れたと言って食事も作らない。子供の飯もレトルト。洗濯物も食器も放置。
自分の母親は少なくとも違ってもっと働き者だった。親父は僕よりもずっと収入の安定しない自営業だったけど、仕事は好きにさせてた。足りない収入は自分がパートして。食事もレトルトが食卓に並ぶことはなかった。
母親と嫁を比較しちゃいかんだろうけど、僕の仕事での苦労ほどにはやってくれない不満がある。だから、妻に仕事に口を出される筋合いがないとは思う。
でも、今の会社に、入る際に引っ越しが必要だったので妻には仕事を辞めてもらった負い目が僕にはある。転職してから一年は頑張ったが、妻のキャリアを傷つけた責任があり、それは一生のものなので、そのことがこの悩みをとても複雑にしている。

転職前に自分の持っていた見通しの甘さが辛い。その間違いを認めたとして、次に何が出来るか。どう動くべきか。